Village in the Sky


あれは何歳くらいの頃だったでしょうか。
深夜、家族が寝静まってから一人で居間でテレビを見ていると
これまで見たこともないようなシーンが画面に広がりました。
それは "Dance with Wolves"という映画で、俳優のケビン・コスナーが
私財をつぎ込んで製作したという、北米インディアンのお話でした。

どこかおとぎ話のようにしか思っていなかったインディアンの人々の
生活の様子がとてもリアルに描かれていて、私は心は釘付けになり、
そして彼らの辿らなければならなかった運命に、最後は悲しくて
悲しくて涙が止まらない・・・
そんな悲しい印象が、その後何年もの間、私の胸には消えずに残って
いたのでした。

時は経ち、私は今、どういった訳か(それを思うといつも本当に
不思議でたまらないのですが・・・)今もインディアンの人々が
暮らすニューメキシコに住んでいます。
最近テレビで "Dance with Wolves" が放送されていたので
なんだか感慨深く、そしてまた新しい視点でそれを見ていたのですが
それでも見終わった後の悲しい気持ちは、ずっと昔のあのときと
まるで同じでした。

あれからも、インディアンの精神性などに興味を持っていた私は
日本でもそういった関係の本を読んだり、ある種の憧れを抱いていた
のですが、実際にここで接する現代の彼らの姿を見ると・・・
悲しい現実・・・という言葉が、どうしても出てきてしまいます。

日本の伝統美や精神に魅せられ、日本に憧れていた人が、いざ日本に
来てみて、心底ガッカリした・・・という話をいくつか聞いたことが
ありますが、きっとそれと同じような気持ちなのだろうと思います。


ニューメキシコには、今でも19の部族がプエブロと言われる集落を
形成して暮らしています。
また北西部では、ニューメキシコ、アリゾナ、コロラド、ユタの4州に
またがり、ナバホ族の自治国家がかなり大きな範囲を占めています。

元々、プエブロの民族は平和的な言わば農耕民族、それに対して
ナバホ族は移動狩猟民族のような感じで、時にはプエブロを侵略したり
と、両者は長い間そんな関係性で存在していたのだいうことを、
地元の人から聞きました。

いくつかのプエブロは、村の一部を観光客用に開放しているので
私たちはその様子を垣間見ることができます。
今回の写真は、全て昨年の夏に訪れた、Acoma Pueblo(アコマ・
プエブロ)で撮ったものです。


Acomaは、それぞれの模様が意味を持つ繊細な幾何学模様が特徴的な
陶器の壷が有名なプエブロなのですが、別名 "Sky City" と呼ばれていて
それは、文字通り、本当に高い岩山の上に形成されているからです。

他の部族からの防衛のため、そして東海岸から入ってきた移住民のみ
ならず、スペインからの侵略からも逃れる為に、このような高い場所に
村を築き、保ち続けてきたのでしょうか。

そこにはアメリカ合衆国建国以前の長い長い歴史があったに違いない
のですが、何しろ彼らの文化には文字がなく、正確な史実は誰にも
わかりません。
ひょっとしたら部族の中では、口頭による伝承がひっそりと行われて
いるのかも知れませんが、それが私たちの耳に触れることはおそらく
一生、ないのでしょう。


天空の村から、どこまでも果てしないその大地を見晴らしていると、
ふと "Dance with Wolves" のワンシーンのように、精悍なインディアン
たちが馬にまたがり、タタンカ(バッファロー)を追って、その広い
平原を、生き生きと駆け回っている姿が蘇ってくるようでした。

同時に、とあるインディアンの言葉が私の頭を過りました。


ーそれでも私たちは白人を恨んでいない。
歴史上起こったことは、すべてに意味があるからだ。



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