Isla Mujeres
前回のブログを書いてから、あっという間に月日が過ぎ去っていました!(いつものことですが・・・)
もう少しニューメキシコのことを書きたいなと思っていたのに、いつの間にか冬が終わり、春も過ぎ・・・ボストンも今やすっかり夏です。
全ての生命が動きを止め、芯まで凍りそうなあの極寒の日々のことなど、もうあまり実感を伴って思い出せないくらい、辺りには緑が溢れ太陽の光が燦々と降り注ぐ季節になりました。
ということで、だいぶ間も空いてしまったので、とりあえずニューメキシコのことはまたの機会にして、今回は別のことを・・・また別の旅の話を書いてみようかなと思います。
先月、去年の秋に訪れたメキシコのユカタン半島に、再び訪れる機会がありました。
こんなにも短い期間内に二度も行くことになるとは思ってもみなかったのですが、あの焼け付くような太陽の下に輝くエメラルドグリーンの海や、命の全てが五感を通して鮮やかに感じられる場所にまた戻れることに、私はとてもワクワクしていました。
ところが、出発の朝から予約していたタクシーが来ず、見事に飛行機に乗り遅れたり、やっとカンクンに辿り着いたと思ったら荷物が行方不明になったりと、初日からトラブル続き。。
そのためグッタリしてしまい、もともと体調もあまり良くなかったこともあって、当初はユカタン半島の西側の方まで足を延ばす予定だったのを止めて、とりあえずカンクンのホテルの部屋でゆっくりと過ごすことにしました。
毎日この海を眺めて・・・。はー、なんて贅沢。
私は旅行に行くとわりと行動派で、あまりホテルでのんびりというタイプではないのですが、今回は部屋からすぐそこに海が広がっているという素晴らしいロケーションだったので、その海を眺めながらバルコニーでゆっくりと本を読んだり、遥か彼方の水平線の先に焦点を合わせて無心の境地でヨガをしてみたりと、部屋から出ていないのに、なんだかすごく、すごーく贅沢な時間を過ごしているなぁ・・・という気分になりました。
何よりも毎朝、波の音と海鳥たちの声で目覚めるのが、本当に本当に幸せで。
まだ意識は覚醒するかしないかの境界でまどろんでる最中、肉体は五感を通して豊かにこの現実世界を感じ取っているような、あの不思議な感覚。
この状態がずっと続けばいいのになぁ・・・と、完全に目が覚めてしまうのが惜しいような、そんな至福の時間を毎朝少しの間、じんわりと味わっていたのでした。
ユカタン半島の鮮やかな大自然と、カリブ海に広〜い空・・・その悠久を感じさせる時間の流れの中では、どうやら普段活発に働いている脳は少し休止状態に入り、その分五感の繊細な感覚がじわじわと蘇ってきて、ただ感じる、ということを自然と促されるような気がします。
部屋の反対側にはこんなラグーンが。海もいいけれど、
私はこのひっそりとしたラグーンもとても好きでした。
そんな風に過ごしているうちに少しずつ元気も回復してきたので、ある日はちょっと出かけてみようと、一人でバスとフェリーを乗り継いで、カンクンのすぐ近くにあるイスラ・ムヘーレスという島に行ってきました。
この島は前回来た時にも訪れたのですが、実は昔20歳くらいの時に、とある写真集で見て、「行ってみたい!」と思っていた島なのです。
そんな訳で、前回訪れた時にはちょっとした興奮状態で、スクーターをレンタルして島中を駆け回り、ドルフィン・スウィムを体験したりと、アクティブに過ごしたのですが、今回はだいぶ落ち着いて、土産物屋の呼び込みや様々なツアーなどの勧誘を冷静にかわしつつ、海辺の食堂に入ってのんびりごはんを食べたり、細い路地をブラブラと歩いたり、岬の先端に海を見に行ったりして過ごしていました。
ダウンタウンにはお土産やさんが連なるようにギッシリ。
ギリシャに行った時も思ったけれど、島の猫は自由気ままでいいな〜
その写真集を見た当時、まずこの島に溢れる独特の鮮やかな色彩・・・空と海の青さだけではなく、島中を彩るカラフルな街並みや、エキゾチックなカトリックの教会にマリア像など、シックなトーンの日本や繊細なグラデーションを持つヨーロッパとは正反対の雰囲気に、軽いショックを伴って、ぐっと心が惹きつけられてしまいました。
イスラ・ムヘーレスとはスペイン語で「女たちの島」という意味です。
その昔この島はマヤの聖地で、豊穣の女神イシュチェルが祀られていたのですが、スペイン人がこの地に初めて降り立った時、その女神の像がいくつも発見されたために、ここを「女たちの島」と名付けたのだそうです。
島の一番の先住民であろうイグアナたちが、今回も至るところに。
この子は暑さでダレているのかペタンと岩に突っ伏して、
じーっとエメラルドの海を見つめているようでした。
女神の像が発見された、マヤの遺跡。
手前には女神イシュチェルの名前が書かれている。
イシュチェルは月の女神でもあり、雨を降らせ命を育てるなど自然界の水の要素を司り、子宝や出産まであらゆる方面で女性を守ってくれるという、強く美しい女神。
そんな女神に守られた島とは、一体どんなところなんだろう・・・?と、鮮やかな色彩に加えて、どこかおとぎ話のようなその神秘的な雰囲気にも惹かれて、いつか行ってみたいなぁ・・・と若き日の私は想いを馳せていた訳なのですが、去年カンクンに行くことになった時、イスラ・ムヘーレスがそのすぐ近くにあることに気づいてビックリ!
しかもこんな短期間に二度も訪れることになるなんて、ちょっと拍子抜けなくらいでした 笑
実際に来てみると、本当に小さな島で、現在はそのほとんどが観光地化されてしまっているのですが、土産物屋がひしめくダウンタウンから少し離れると、人気のないビーチがあったり、すっと伸びる一本道の両脇に可愛らしい宿や教会が並んでいたり、脇道に入ると現地の住民の生活が垣間見えたりして、いかにもリゾートといった雰囲気のカンクンよりも、ずっと素朴でいい感じです。
ちょっと表通りから外れると、驚くほど人気がなくてひっそりとしている。
何て事のない風景に、ふと時が止まったように感じる瞬間。
島の最南端プンタ・スールは、イスラ・ムヘーレスで一番好きな場所。
何もない感じと、碧い海をずーっと見渡せるのが最高。
燦々と輝く太陽の光の下で、ゆらゆら揺れる椰子の木。
島特有の、のんびりとした時間の流れ。
そんな空気感を全身で感じ、あ〜やっぱり島っていいなぁ・・・としみじみ。
そういえば、どこか昔からの信仰の息吹を感じられるような雰囲気もあって、なんだかちょっと沖縄やバリ島に似ているような気もしました。
イシュチェルを祀っていたマヤ文明の面影がほとんど残っていないのは残念だなぁと思うのですが・・・けれども、今回島を歩いていて、ふとあることに気がついたのです。
島の所々で目にするカトリック教会にある像が、イエス・キリストではなく、全部マリア像だということに・・・。
これはひょっとして、イシュチェル信仰の名残りなのかもしれない・・・宗教は変わっても、イシュチェルがマリア様に姿を変えて、今でもこの島は女神に守られた「女たちの島」なのかも・・・?
そう思うと、なんだかちょっと嬉しくなりました。
ダウンタウンの広場にある教会の上にも色鮮やかなマリア様が。
まるでこの島全体を見守っているかのようでした。
さて、先ほども少し触れましたが、前回はこの島でイルカと触れ合うことができました。
その体験についても続けて書こうと思っていたのですが、少し長くなりそうなので、それはまた次の機会に・・・!