Meditation in Rainstorm

Tulum, Mexico


前回のユカタン半島の旅の記事から本当に、ずいぶんな時間が経ってしまったのですが、もう少し書いておきたいことがあるので、記憶を思い起こしてみることにします。


去年の6月、それは二度目のユカタン半島への旅だったのですが、カンクンで数日間ゆっくり過ごした後は、海岸線を車で2時間ほど南下したところにあるトゥルムへと移動しました。

カンクンが一般向けのリゾート地だとしたら、そこから少し南下したリヴィエラ・マヤと呼ばれる地帯はプライベート感のあるホテルがひっそりと立ち並ぶ大人のリゾート地で、さらにそこから南下すると、今度は一転してちょっと西洋のヒッピー文化の香りが漂う、プリミティブな雰囲気のトゥルムに到着します。


トゥルムの海岸沿いには、カバーニャスタイルの宿がずーっと立ち並んでいます。


この時トゥルムを訪れた理由のひとつに、海辺のカバーニャと呼ばれる原始的な小屋スタイルの宿に泊まってみたかった、というのがありました。

もう波打ち際がほんとうにすぐそこに…というビーチにある宿で、電気の使用も制限されており、夜はロウソクのみで過ごす時間。
そしてビーチでハンモックに寝転がって星を見たり、すぐそこに波の音を感じながら眠りについたり…そんなことをとっても楽しみにして訪れたのでした。


ところが!!
トゥルムにいた2日間は、なんと最悪のお天気で、現地の人も驚くような大雨となってしまったのです。

外との区切りのゆるい小屋スタイルの宿は、もう中まで水浸し。
風に煽られた波までが入ってきそうなほどで、さすがに宿のオーナーも気を回して部屋を変えてくれたのですが、それでも空気中の湿気も体験したことのないほどで、まるでずーっと水の中にいるかのよう。。
もう、自分たちも荷物も全てがぐっしょりと、それはそれは悲惨なことになってしまいました。


波も荒れて暴風が吹きさらし…椰子の木もびっくりするほど
しなっていて、心配になってしまいました 笑


ああ〜ハンモックで星空なんて、夢のまた夢…と、想像していたのとは180度違う現実にガックリして、しかも何をしても何ともならない状況だったのでしばらく途方に暮れていたのですが…けれどもなんだか途中からはもう、そのあまりの凄さにちょっと面白くなってきてしまいました 笑

こういうところは、アメリカに引っ越してきてからのサバイバル生活で、精神が鍛えられたというか、おおらかさが養われたのかなぁと思います。

そして部屋の中にいても、持ってきた本さえぐっしょりで読めず、することが何もないので、とりあえず窓の外のジャングルにこれでもかというほど降り注ぐ大粒の雨や、呆れるくらいにザーザーという大音量の雨音にじっと意識を傾けてみることにしました。

すると不思議なことに、そうした途端、頭が一気に空っぽになり、さっきまでの落胆や混乱はどこかへサーッと消えていってしまったのです。


変更してもらったお部屋は石造りの壁だったので、なんとか浸水は免れました。
部屋の中はこの通り、とても素敵だったのですが。。
カバーニャはすべて自然素材で造られていて、屋根は椰子の葉っぱなのだそう。


といっても、それも今だからこそそう描写しているだけで、その時というのはもう本当にただただ、その雨が熱帯樹の大きな葉っぱを止め処なく揺らす様や、一時も止むことのない音の連続にじっと見入り、聴き入っていた、というだけ。

それはとても静かで、なつかしく、うつくしくて。

なんだか不思議な感覚だったのですが、まるで瞑想のようだったなぁと思います。
あまり詳しくないのですが、もしかして禅もそういった感じなのでしょうか。


そしてこれも後で思ったのですが、普段私たちは、そんなふうにただひたすら目の前で起こっている現象に没頭することって、なかなかないのですよね。
やっぱり何かしらすることがあって、そちらに気を取られてしまうものです。

うまく伝えられるかどうかわかりませんが、とにかくあの経験は、今も私の中でとっても静かで鮮やかな記憶として、そしてちょっと印象深い体験として残っているのです。
何だか別世界のようでした。

あんなに大変な思いをしたというのに…! 笑


写真はすべてちょっと小降りになったときのものです。
本格的な時は、カメラを出している余裕などとてもありませんでした!


そしてそんな中でも、例えば「こんなひどい天気になるなんて!」と宿のオーナーが二度も部屋を変更してくれたり、閑古鳥のビーチのレストランで「はー…」となっている私たちに少し同情気味にサービスをしてくれたスタッフなど…

なんだか、普通の時とはまた違ったムードのやりとりがあって、それはそれでとっても味のある旅の思い出なのですよね。

それにあのまとわりつくような湿度に、葉に落ちる雨粒やうっとおしいほどの雨音…
ここでの体験は肌感覚と共に、今でも鮮やかに蘇ってくるほどです。


そんな風に、とにかくトゥルムでの2日間は笑ってしまうくらい最悪のお天気だったのですが、その中でも何とか、二つのマヤ遺跡を訪れることができました。

長くなってしまうので、次に分けて書きたいと思います。


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