Dream of a Whale


ホエール・ウォッチングに行ってきました!

この日は久しぶりになんだか心が解放されたような、爽やかで
自由な気分になれた一日でした。

引っ越しや新しい生活、都市に馴染むのに、少し心も体も凝り固まって
しまっていたのかな・・・自然の中に行きたい!と、いつもどこかで
心が欲していたような気がします。

久しぶりに目にする大海原と水平線。
水、水、水・・・!

私はこちらへ戻って来てから、水に対する興味がものすごいのです。
空気中の湿度やそして緑の植物と水分など、肌で感じるものから
池や湖の水面の様子や、水辺に生息する生物の多様性にまで・・・。


環境学的に見る「水」というものにも興味があるし、物理学的には
水はこの地球上の他の物質とは違う、とても特異で不思議な性質を
持っている・・・そのことにも、とても興味があります。

しばらくの間砂漠地帯で暮らしていたおかげで、私にとっては今や
水も海もとっても新鮮で、まるで初めて見るかのような興奮を伴って
いるのです。
昔はそんなこと、まったくもって普通のことだったのに。


ホエール・ウォッチングに出る前には、港に隣接している水族館に
立ち寄りました。

夏休みで、館内は子供たちでいっぱい!なんて賑やか。
その中にまぎれて、ヒトデやウニを触って興奮してみたり、
サメやウミガメが悠々と泳ぐ姿にただ見とれてみたり・・・ 。

子供たちに人気のカラフルなカエル。
葉っぱの裏から見る影が・・・可愛い!

もうずいぶんと前になりますが、映画"Deep Blue"が公開されたころ、
スクリーンに映し出される神秘的な海の世界に、私は完全に
魅了されてしまいました。

地球上にあって、海の中は人間の住む世界でありません。
私たちがそのまま行ったら死んでしまう、まるで宇宙空間のように
完全なる別の世界。
その中で生きる様々な生物の、なんと多様で美しくて不思議なこと。

そういった生き物たちをこんなふうに水族館で見ることができる
なんて、私たちは当たり前のように思っているけれど、でも
本当はすごく貴重なことなのだと思います。

クラゲはまるで美しいランプシェード。
 
Leafy sea dragon
海藻を身に纏った、不思議なタツノオトシゴ。

 イソギンチャク。・・・生きているんですよね。息をしている。


そして、いよいよ夕方近くになってから、海へ出ました。
フェリーで行くこと1時間半ほど。
最初の一頭を見たときには、ほんとうに感動しました!


最初にクジラがいる!と分かるのは、クジラが息継ぎをするために
海面にプシューッと潮が上がってくるときです。
それからゆーっくりと海面に背中を現し、しばらくするとまた海の中へ
もぐっていきます。

その背中を見ていると、この未知の海の中に生息する、生まれて初めて
出会った大きな生き物に、何とも言えず愛おしい気持ちが沸き起こって
きました。
あぁ〜こんなところにいたんだね!と、なんだかそんな風に、
クジラに話しかけたくなるような。

 イルカのような背中は、小ぶりのミンククジラ。


ニューメキシコにいた頃、星野道夫さんの「旅をする木」という本を
繰り返し読んでいた時期がありました。

厳しくも美しいアラスカの大自然の中で暮らした星野さんの感性溢れる
文章に、何度読んでもじんわりと心を温められるとても好きな本。
同じ大自然でもニューメキシコとは全く違う北の大地に想いを馳せては
あぁ、いつか行ってみたいなぁ〜と思っていました。

その中の好きなエピソードの一つに、ザトウクジラのお話があります。
星野さんの友人が東京からアラスカを訪れていたとき、ある日目の前で
ザトウクジラが大きくジャンプするのを目の当たりにして、
その圧倒的な姿に言葉を失います。

そして東京へ戻った後、彼女が、仕事は忙しかったけれど本当に行って
良かった、と言うのです。

何が良かったかって、それは、自分が東京で慌ただしく働いているとき
ちょうどその同じ瞬間に、もしかしたらアラスカの海ではクジラが
飛び上がっているかもしれない・・・そのことを知れて良かった、と。


私はその気持ちがとてもよくわかるような気がしました。

人間の作った社会と数字で刻まれる時間・・・私たちは人間である以上
そのシステムの中でとにかく生きていかなくてはならないけれど、
でも、それとは別のもっと大きな、普遍的なサイクルとゆったりとした
時間の流れが、確かにこの地球には存在するんだということを知ると、
何だかホッとするのです。
そして、頑張れるような気がするのです。

この日、大海原とクジラを見て、私はまたそのことを思いました。



ところで、引っ越しの前に一眼レフが壊れてしまったので、今回は
コンパクトカメラで撮ろうと頑張ってみたのですが、やっぱりクジラは
なかなか難しかった・・・。
でもその分、シャッターチャンスを掴むことに集中しすぎることなく
ゆっくりと目で見て、心で感じることが出来たのでよかったのかな。

もっともっと近くで見てみたいし、今回はそのブリーチングと呼ばれる
ザトウクジラのダイナミックなジャンプも見られなかったので、
また何回でも訪れてみたいなと思います。
次回はやっぱり、一眼レフを手にして、クジラのことにももう少し
詳しくなっていたいなぁ。



ちょうど夕暮れ時の航海だったので、ニューメキシコで見て以来、
久しぶりに広々としたHorizonに沈む夕陽を見ることもでき、
そして港に着く頃にはすっかり夜の帳が降りていて、ボストンの夜景と
その背後には大きくくっきりとした細い月が、まるで私たちの乗った
船を出迎えてくれているようで、嬉しくなりました。

そんな幸せな一日が終わり、開放感と心地よい疲労と共に家に帰って
ベッドに入ると、私はあっという間に眠りに落ちたのでした。

その夜はクジラの夢を見ました。


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