Vast Sky, Vast Land


最近、過去に撮ったフィルム写真の整理をしていると、とても思い出
深い写真が出てきました。
それは、一年前まで住んでいたニューメキシコ州アルバカーキの町の
東端を縁取るサンディア・マウンテンの麓、Foothillで撮ったものです。

なつかしいな、と思って見ていると、それを撮った日のことがフッと
思い出されてきました。
それはちょうど日本の震災からふた月ほど経った頃で、パートナーが
一ヶ月間海外へと旅立つのを空港に見送りに行った後、その足で
一人、この場所に夕焼けを見に行ったのでした。

夕陽の沈む方角が開けていて、地平線までずーっと見渡せるこの場所は
私たちのお気に入りで、ジリジリと焼けつくような太陽の陽射しが
和らぐ夕暮れの時間を見計らっては、よくここに散歩に行ったものでした。

今思うと、ほんとうに、何て乾いた土地だったのだろうと思います。
生えているのはサボテンのような植物ばかりで、見渡す限り一面茶色の
大地には大きな岩がゴロゴロと転がっていて、その合間に同じ茶色の
野うさぎやプレーリードッグたちがちょこちょこと姿を見せていました。


少し麓を登って振り返ると、街全体が見渡せるほどの広い広い景色。
引っ越して一年が過ぎ、ニューメキシコの空気感も随分と自分の中で
薄れてきていたのですが、こうして写真を見ていると、またすぐに
でもこの場所に行けるような気がするくらい、色々なことが蘇ってきます。

ほんとうに、な〜んにもない場所でした。

今暮らしているマサチューセッツの、溢れんばかりの緑や水辺が
嘘のよう。
土地だけでなく、物質的にも、経済的にも、教育の水準も、文化的な
娯楽もたくさん。
便利で、何だって手に入る、ここはそんな場所です。

けれども、あの「なんにもない場所」で過ごしたことで、今ある
全てのものに対する価値観が、私の中でずいぶんと変わったのです。

何にもない・・・最初にそう思った場所に、実は充分に「ある」のだ
と気づいたこと。
そのことは、私たちに新しい目を授けてくれました。

色んな場所に、色んな人が住んでいて、それぞれが毎日暮らしている。
そこに優劣なんかはなくて、ただ多様性があるだけ。
そして皆、自分の心で世界を見ている。

久しぶりにこの広い空と地平線を見て、何だかそんなことを思いました。


久々に、写真のホームページを更新しました。
ブログに載せている写真も多いのですが、よかったらご覧になって
みてくださいね。
http://greennote.4ormat.com/

思い返せばこのホームページも、ちょうど震災後、Foothillでこの
写真を撮ったのと同じ頃に作りました。
そこには、なんで写真を撮るんだろう?という疑問への自分なりの
答え・・・どんなことがあっても、この世の中の美しい部分を
見つめていたいという、そういう気持ちで、平和や調和を想って
始めたのでした。
私の心の変化とともに写真の編成も少しずつ変化していますが、
今でもその気持ちは同じままです。

 -Those who contemplate the beauty of the earth find reserves of strength 
 that will endure as long as life lasts.                  
                                                                                           - Rachel Carson

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