These Beautiful Days


長い間、ず〜っと眠ったまま何の変化もなかった自然界が、
このひと月、ふた月ほどの間に驚くほどの速さで展開しています。

木々の緑は留まるところを知らずモジャモジャと成長を続け、
少し前まで咲いていたタンポポはあっという間に綿毛になって
いつの間にかみんな風に吹かれて飛んでいってしまったし、
優しい紫色のライラックがあちこちの庭先からその香しい匂いを
ふわりと漂わせていたのはたったの一週間ほど。

春先にマーケットを彩っていたヒヤシンスやラナンキュラスも
いつの間にか姿を消し、今はもう少しで芍薬が終わってしまうかなぁ
というところです。


いつも散歩に行くに住み着いていた白鳥たちは、冬の一時期には
15〜16羽程にまで増えていたのですが、一昨日行ってみるともう
一羽もいませんでした。
みんなまた寒い土地に移動して行ったのでしょうね。
ちょっと寂しいけれど、また今年の秋に会えるかなぁと思うと、
それも楽しみです。

時折うだるような暑さが押し寄せたと思えば急に涼しくなったり、
しとしと降る雨に癒されるなぁと思っていたら数時間後にはスッキリと
一面の青空が広がっていたりと、お天気はまるで乙女心のように
気まぐれですが、そんな毎日の中、季節は確実に夏へと向かっているん
だなぁと、あらゆるところで感じられる今日この頃です。
 


最近は、家の中にいてもずいぶんと光が強くなったなぁと思います。

東側のキッチンに差し込む朝日は、冬の間の柔らかな陽射しとは違い、
どこか凛としていて鮮やか。
けれども静けさを伴って、一日の始まりを美しく告げてくれます。

そして夕方には、黄金色に輝く夕陽が西側のリビングに広がって、
壁や床に、光と影のアートが生み出されます。
木漏れ日がチラチラと揺れて、窓の外から聞こえてくる小鳥の声と
一体となり、まるでショートムービーでも見ているかのよう。

そうしている間にも地球はものすごい早さで回転し、あっという間に
光はその姿を変えてしまいます。
季節やお天気や時間帯によって刻々と変化する光の表情。
一度として、同じ瞬間はやって来ないのです。

そして、光がなければ影もなく、こんな風に世界中を彩る色だって
存在することはできません。

写真を撮るときはいつも、その目の前のモノを撮るというよりは、
その時の光が生み出す瞬間の表情や空気感に私の中の何かが反応して
シャッターを切っているような気がします。


空を流れる雲。
風を受けて揺れる木の葉。
花の繊細で完璧な構造。
ガラスのコップ。
家具の木や、テキスタイルの質感。
猫の青い青い、大きな瞳。

普段は気にも留めていないものが、ある時光を受けて、どきっと
するほどの美しさを見せてくれる瞬間があります。

ほんとうに、何でもない日常なのだけれど、時々どうしようも
なく心を奪われて、その瞬間の美しさに吸い込まれてしまいそうに
なって、私はしばらく時間を忘れてしまいます。

それはまるで、自分が時間の流れからポンと脱線して、時間と時間の
狭間の、その瞬間という場所に降り立ってしまったかのような。
 



そんな時、この瞬間が永遠だったら、この一瞬が全てだったらと
そんなふうに思います。

この瞬間の美しさの中に生きられたらいいのに、と。

けれども本当は、その瞬間瞬間の美しさこそが、この世の中の
真実だとしたら・・・?

私たちは普段は忙しくて、たくさんの情報で覆い尽くされて、
本当の世界を見ることを忘れてしまっているだけなのかもしれません。

More Posts