New Mexican Sky


太陽の光がぐんぐんと増してゆくこの季節。

ニューメキシコの空を仰ぐと、夏へと向かうこの季節ののびやかさを
雲や光の変化からも感じることができます。

あまり日に焼けすぎないように気をつけなくては、と思いながらも
毎日この空の下を歩くのが気持ちよくて、気がつけば私はすでに
こんがりと焼けてしまっていました。

この間も書きましたが「ニューメキシコで何が一番好き?」と聞かれたら
私はやっぱり「空」と答えるだろうなぁと思います。

思えばこれまで私は、こんなに空の広い場所に住んだことは
ありませんでした。

高いところから見渡すと、地上は空の光を反射して白くかすんで見える。
まるで光の洪水みたいだ、といつも思う。


ニューメキシコでの暮らしていると、いつも視界の半分以上は空が
占めていると言っていいくらい、その存在感は絶大です。

もうずいぶんと慣れてしまって、それが当たり前のようになっても
いるのですが、たまに違う場所に行くと、そのことに気がついて
なんだかハッとするのです。

そして今もこうして空を眺めていて、都会で暮らしていたときには
この視界のほとんどが、ビルや建物で埋まっていたのかなぁと思うと
なんだか不思議な気さえしてきます。


 ホワイトサンズと空。なんて完璧な青と白のコントラスト。


ニューメキシコに引っ越してきてからしばらく経った頃、
ここでの暮らしに少し戸惑っている時期がありました。

生活環境があまりにもガラリと変わり、何だかここには自分の求める
ものが、何もないような気持ちになっていたのです。

でもそんなある日、ドライブをしていてふと、いつも視界に
広がっている、ゆったりと大きな空の存在に気がつきました。

「あ、ここには、こんなに大きくて美しい空があるんだ・・・!」

その時から私の中で何かが変わり、自然と自分の意識は、ニュー
メキシコに「ある」ものの方へと向くようになっていきました。

そしてそんなふうに私が心を開くと、ニューメキシコはさらに
たくさんの美しさを、私に見せてくれるようになったのです。


雲に虹の光が。彩雲と呼ばれるものの一種かな。


毎日違った表情を見せてくれる空。

とくに夕暮れ時は、まるで雲と光とが生み出す色彩の音色とでも
言うような、感動的な美しさです。

時を忘れて見入っていると、そのうち藍色の幕が西の地平線までを
覆い尽くし、空は一面、星空へと塗り替えられていきます。


夜の帳の降りゆく空に、細い月と飛行機。


最初に来た頃から、ニューメキシコの空の色はヴァイオレットの色味が
強いなぁと、思っていたのですが、それはここの標高の高さのためで、
空気が薄いと赤色はあまり吸収されずに、空の青はこんなふうに
紫がかったトーンになるのだそうです。

こんな奇跡的な美しさを日常的に見せてくれる空・・・。
ほんとうに、自然ってすばらしいなぁと思います。


ずっと向こう側で、雨が降っているのが見える。
なんだかドラマティックでドキドキする。


そういえば、私の写真の撮り方にも変化がありました。

それまでは身の回りのものや人を撮ることが多かったのですが、
ニューメキシコに来てからは、気がつくと空と地平線の写真ばかり。

構図も、インパクトではなく、ゆったりと引いて全体をじんわりと
納めるようになって、これはなんだか自分自身の心の変化が表れて
いるのかなぁ、とも思います。

毎日食べるものが人の体を作るのと同じように、
毎日目にしているものも、その人を形成する大切な一要素となっている
のかもしれません。


太陽は地平線に沈む直前の一瞬、こんなふうに楕円形になる。
まるで五線譜の上の音符みたいに。


ジョージア・オキーフも魅せられ、描き続けたニューメキシカン・
スカイ。

この先ずうっと、私の中にもこの同じ空が、いつまでも色褪せずに、
のびやかに広がり続けてくれるといいなと思います。



More Posts