Wonder
ニューメキシコは、もうすっかり夏の気配。
朝起てベランダに出ると、最近仲間入りしたプリムローズの
可憐な花びらに朝日が射し、それが神秘的に白く輝いていて
言いようもなくきれいで、しばらくぼーっと見とれてしまう
・・・というのが、最近の一日の始まりです。
日射しの強いニューメキシコですが、そのお陰で全てのものが色濃く
鮮やかに映し出されて、やっぱりきれいだな、といつも思います。
ベランダの前には何本かの木が伸びていて、わさわさ茂る
緑の葉っぱが本当に気持ちよく、日射しや強風からも守って
くれるので、この場所で本を読んだり、簡単な食事をしたり
して過ごす時間が今の季節のお気に入りです。
よく小鳥たちがその木の枝に遊びにきては、ピチュピチュと鳴いて
それに反応して、うちの猫たちも「ニャ、ニャッ」なんて言ったり
している姿は、見ているだけで可愛くて癒されます。
数日前には、ちょうど足元くらいにまで伸びている松の木の枝に
すずめが2羽、巣づくりをはじめました。
2羽(夫婦かな?)で協力し合い、茶色くなった松の葉っぱで器用に
形づくっていく様子はとても興味深くて、しばし手を止めてじっくりと
見入ってしまいました。
そしていよいよ巣が完成!と思ったら、さらに彼らはその隣の木の
緑の葉っぱを摘んできては、その巣に屋根のように葉っぱをかぶせて
いき、出来上がった姿は、ブラウンとグリーンのツートンカラーの
モサモサとしたまんまるいおうちでした。
天井にはどこから拾ってきたのか、他の鳥の羽が2、3本アクセントの
ように飾られて・・・まるでアートのよう。
すごいなぁ。と、ひとり感心してしまう私でした。
自然や生命の神秘を感じとる感性。
それを、かつてアメリカの海洋生物学者のレイチェル・カーソンは
"Sense of Wonder" と名付けました。
ニューメキシコに暮らして一年が過ぎた今、特別なことではなく
毎日の生活の中にそういう感覚が常に息づいているのを
感じるようになりました。
先月は、日本から訪ねてきてくれた友人と一緒に
画家のジョージア・オキーフのゆかりの地である、
アビキューというところに一泊で行ってきました。
赤い大地と岩山とが続き、その中にぽっかりと溜まった
大きな水たまりのような湖。
そこに映し出される、時間とともに表情を変える空の色。
空、キャニオン、メサ、花、動物の骨・・・
オキーフは、そういった自然のモチーフを描きながらも
そこにさらなる深遠な、抽象的な世界を見いだしていましたが、
じりじりと降り注ぐ太陽の下、他にだーれもいない広大な大地に
ぽつんと立っていると、何となく、それがわかるような気がしました。
彼女の自宅にも訪れましたが、家の中も外も、アトリエから臨む
アビキューの景色も、すべてがとてもインスピレーショナルで
なんだか違う時間の中にいたような、とっても貴重な、
すてきな体験をさせてもらいました。
そして、彼女もまた "Sense of Wonder" を持った人だったのだろうなぁ
と、アドビ様式の彼女の家の中庭から、くっきりと四角く切り取られた
青い空を見上げながら、私は思っていたのでした。
"Those who contemplate the beauty of the earth find reserves
of strength that will endure as long as life lasts."
- Rachel Caron "The Sense of Wonder"