Kasha-Katuwe


流線型。


滑らかなラインを描く岩肌。

この夏に訪れたTent Rocks National Monumentでの写真です。


Tent Rocksと呼ばれるのは、こんな風に、ここの岩の頂上が
ネイティヴ・アメリカンのテントのような形をしているため。
約6〜7百万年前の火山の噴火によって、こんなユニークな形に
形成されたのだそうです。

でも私はそのテント型のテッペンよりも、この波のように流れる
岩の模様と、そこから見える青空に魅了されてしまいました。


異次元の世界への入り口?

そんなことを思わせる岩の裂け目。
この中へ入ると、驚くほど涼しかったのです。
外はもう太陽がじりじりと照りつけて、ほんとうに暑かったのに。


ニューメキシコへ来てから、最初はこうした
地球そのままの姿がある場所に訪れると、
「あぁ、地球にはこんな場所がまだ残っているんだなぁ」
なんて思っていたのですが、最近では、
「いやいや、これが本当の姿なんだ」と
すっかり目が覚めてきました。



それともうひとつ、こういう場所を歩いているといつもふつふつと
沸き上がってくる想いがあります。

私たちは子供の頃から歴史の授業や、博物館や遺跡を訪れては

「現代のような技術や便利なもののなかった昔の人は
原始的で、とても大変な生活をしていたのですよ」

ということを聞かされ、そう思い込んでいたわけですが
実はそれほどでもなかったんじゃないのかな?
と思えてきたのです。

だって、例えばこうした岩の間に入ったり岩に寝そべってみると
ほんとうに驚くほど涼しくて快適で、気持ちがいいんです。

この間アリゾナで、ネイティヴ・アメリカンのご先祖様が
暮らしていた場所を訪れたときにも、同じことを思いました。

水と緑と岩のある場所は、建物の中のエアコンよりも
ずっとずっと快適だし、それだけではなく、木漏れ日や
小鳥のさえずり、それに風に吹かれた木々のざわめきなど
五感の全てで心地よく感じるものが周りには溢れていて、
本当に心身が癒され、気持ちがいいのです。


考えてみればその昔は、今のようなヒートアイランド現象もないし
コンピューターによる目の疲れや肩こり、電磁波による心身の不調
などといった現代病のようなものもなかったのですよね。

その上でこの大自然からエネルギーを日常的に享受する暮らし。
羨ましいな。

それに、今のように大量生産する機械やコンピューターなど
そして車や飛行機のような乗り物もなかった時代は
今から考えると、何を作るにもどこに行くにも時間がかかり
大変だったろうなぁなんて思ってしまうのですが・・・でも

実際は、その時代の彼らにとってはそれは当たり前のことで
極端にもっと速く、もっと遠く、できるだけ沢山!
なんて欲張って思うこともなく、
自分たちの能力のできる範囲で集中し、工夫を凝らして
最大限の成果を引き出していたのだろうと思うと
そちらの方がなんだか豊かで、偉大な気がしてしまいます。

それどころか、全てを自分の心と身体の力で行っていた彼らは、
身体的にも今の私たちよりもずっと強くしなやかだったはずですし
自然と調和するその生き方は、彼らの心を豊かに謙虚にし、
マインドも五感も研ぎすまされていたに違いありません。

そして現代の私たちとはきっと、「大変だ」と感じるところも
全く違っていたのだろうな、と思います。



そんなことを考えながら頂上へ登ると、そこからはテント型の
テッペンや、周辺の山々が見渡せました。

元々この付近に住む Cochiti 族などの言葉では、この場所は
「白い断崖」を意味する"Kasha-Katuwe"と呼ばれていたそうですが
全くその名の通りの眺めです。

帰り道のトレイル、岩の狭間でふと立ち止まって耳を澄ますと、
その流線型の岩の間を風が通り抜けていくためか
ヒュゥゥゥ〜〜〜っという音が辺り一帯に響き渡りました。

そこには、私たちと、岩と、風の音だけ。

まるでナウシカの風の谷にでもいるかのような気分になりました。

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