Deep Autumn and An Apple Orchard


11月になりました。

先週は一週間ほどサンフランシスコに滞在していたのですが、帰ってきてみるとマサチューセッツの秋はすっかりと深まっていて辺りは山吹色や深い赤色に紅葉した木々で彩られて美しく、たったの一週間だというのに、こんなにも変化するものなんだなぁと驚きました。

その紅葉もピークを少し通り越したようで、もう半分くらいは散ってしまっているのですが、それらはまるであたたかな黄色い絨毯のようにアパートの駐車場やいつもの散歩道に敷き詰められ、その上をそっと歩くとふかふかしていて、なんだか子供の頃のことを思い出してしまいました。

辺りには冬支度を始めたリスたちがちょこちょこと動き回って忙しそう。
夏の間によく見かけたブルー・ジェイという美しい青色をした鳥が、なぜだか今頃になってまたたくさん姿を表し、黄色い絨毯の上に綺麗な青いコントラストを生み出していました。

近所を歩きながらそんな光景を見ていると、薄いオレンジ色の光が柔らかく全体を同じトーンで包み込む西海岸とは違って、東海岸の光は深みがあってなんて色鮮やかなんだろうと、そんなことにハッと気がつきました。

私が住んでいるのはボストン市からはすこし離れた小さな街なのですが、自然も豊かで人々は勤勉で親切、アメリカの中では歴史のある地域で、景観も美しいのです。

ニューメキシコからこちらに戻ってきて1年半が経とうとしていますが、住むことになる場所というのは、やっぱり縁があるのだろうなぁ、と西海岸から帰ってきてみてそんなことをしみじみと感じました。



さて、ひと月ほど前になりますが、秋を味わいにニューハンプシャーまで足を延ばし、りんご狩りに行ってきました。

ニューハンプシャーはマサチューセッツの北に位置する州なのですが、海岸線はほとんどなく、その大部分は森林に占められています。
マサチューセッツよりもだいぶカントリーサイドになるので、ますます自然が豊かで、空気もきれい。
北部には、メイン州にかけてホワイトマウンテンと呼ばれる国立森林公園があり、多くのアウトドア好きの人たちの心を惹き付けています。


木々に囲まれたのどかなカントリーロードを通り抜けて辿り着いた、とある広いりんご園。
この地域にはたくさんのりんご園が軒を連ねているので、どこに入ろうかと迷ってしまうほどです。


園内にはまるでちょっとした林のようにりんごの木が立ち並び、その種類も豊富。
マーケットでも見かけるコートランド、レッドデリシャスにゴールデンデリシャス、マッキントッシュ等々、数種類のりんごがそれぞれ、手を伸ばせばすぐ届くような場所にたわわに実っているのです。
なんだかそんなことにとても感動してしまいました。

そして木の枝から捥いだりんごをきゅきゅっと布で拭くと、表面の果粉(様々な害から身を守るためにりんご自身が作り出している粉のようなもの)がとれ、ツルツルで真っ赤な表面が姿を表します。
それを、その場でガブリ。・・・それが、とても美味しい!

果樹園って、なんだか楽園のようだなぁと思いました。


こんなふうに、木の下にもごろごろとりんごが落ちているのです。
もったいないなぁ・・・と一瞬思ってしまうのですが、この実もそのうちバクテリアに分解されて、土へと還り、またりんごの木の養分となって次の実を生らせるためのサイクルの一部なのですよね。

 


りんごというのは、アメリカのひとつの象徴的な果物だと思います。
ビッグ・アップルや、スティーヴ・ジョブズのアップルのように、アイコンのようにも使われているりんご。

アメリカに来てからはその種類の豊富さや手軽さに、ずいぶんとりんごを買う機会が多くなりました。
日本のりんごに比べると甘みは少ないしちょっとワイルドな感じの舌触りだったりと、最初はすこし戸惑ったのですが、ケーキやジャムにしたり、今ではちょっとお腹が空いたら皮ごと齧ったり、遠出をする時などにもおやつ代わりに持っていったりと、とても身近な存在になっています。

元々は、アメリカ開拓時代にイギリスから入植した人々がりんごの種を持ってきたことが始まりで、その後全米に広がっていき、人々の食生活に切り離せないものとなっていったようです。
アメリカの歴史と密接に関わっているりんごは、まさにアメリカ人の「スピリット」の象徴なのでしょうね。

「一日一個のりんごは医者要らず」という言葉のとおり、たしかにこの真っ赤なまぁるい果物には、幸せと健康の種が、ぎっしりと詰まっているような気がします。



もうひとつ、私にとってりんごといって思い出すのは、奇跡のりんごの木村秋則さんのことです。
不可能だと言われていた無農薬、無肥料でのりんご栽培を苦難の日々の末に実現させ、日本をはじめ世界へと広めようとされているその姿勢はほんとうに素晴らしいです。
このりんご狩りの時に無性に木村さんの本が読みたくなって、家に帰ってから読んだのですが、何度読んでも深く感銘を受けます。

それは、木村さんの言っていること、見ているものが、決してりんごだけに留まらず、また作物を自然栽培することだけにも留まらず、今この世の中全てのことに関して問いかけ、人々の意識を改善していこうとしているからなのだと思います。

今回訪ねたりんご園は、「減農薬」のりんご園でした。
なかなか自然栽培が世の中に広まるまでには時間がかかるのだろうと思いますが、10年後、20年後にはすべてのりんごが無農薬で食べられる日が来るといいなぁと思いながら、この日りんご園を後にしたのでした。

併設のお店で買ったアップル・サイダーも、ローカルのローハニーも
すべてがフレッシュでやさしく、とても美味しかった。

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