Impressions
底冷えする2月の日本から戻ってきてみると、ボストンはまだまだ
雪の中。
3月になって、こちらでも少〜しずつ春の兆しを感じられるように
なってきたかな?と思っていたところだったのですが、なんとまた
また雪になってしまいました。
「ボストンの3月はこんなものよ。春かな、と思ったらまたすぐに
冬に逆戻り。春はもう少し先ね。」
知人にそう言われて、ふーっと溜め息。
けれど焦っても仕方がないので、もうちょっと気長に待つことにします。
そんな中で日本での写真が現像から上がってきました。
いつものように、写真を見始めると私の心はその場所にトリップして
またその時の空気感を思い出します。
日本に帰ると、必ず最初の数日間は逆カルチャーショックに陥り、
生まれ育った国なのに、まるで自分がストレンジャーになったかの
ような気分になって戸惑ったり、はたまた面白く感じたり。
住み慣れていたはずの街も、なつかしさと新鮮さが一緒くたになって
溢れかえり、とても不思議な感覚です。
見るもの全てが楽しくて、ひとつの通りをまたぐごとにドキドキ。
知っているような知らないような・・・
大通りから奥まったところにひっそりとある小さな神社。
この近くに住んでいた時には気に留めたこともなかったのに、なんだか
とても気になって、迷路のような細い通りを進み参道から階段を上って
後ろを振り返ると、そこには生活感のある家々の屋根と、太古の昔から
この街を守るようにぐるりと取り囲んでいる山々が見えました。
雲で陽射しが陰ったり、また雲間から太陽が顔をのぞかせてキラキラと
光が射したり・・・
この街がすきだなぁ、とじんわり思うのと同時に、見るものすべてが
本当にきれいで、なんだか感動してしまいました。
学生時代からずっと十年以上も見てきた橋からの風景。
変わらない。
変わってゆくのは人間だなぁとしみじみ。
友人とコーヒーを飲みに入った、馴染みの古い喫茶店。
今まで一体何人の人がここに座り、コーヒーを注文し、読書をして、
この窓からの眺めを見てきたのだろう?
そんなことをフッと考えてしまった。
ずいぶんと年季が入り味の出た木のテーブル。
何でもない水の入ったグラス。
情緒とか、佇まいとか、そういうものが歴史とともに息づいている街。
ずっとずっと、こういうものが残っていってほしいなと思います。
そういえば、私は毎回、飛行機が日本に着陸する時に見える日本の
姿に感動してしまいます。
季節や天候によってその都度少しずつ違うのですが、いつも同じように
何だかここは本当に、神様の国だ・・・と思ってしまうのです。
今回は、薄いピンク色がかった雲が日本の上空一面を覆っていて、
飛行機はその中を静かに下降していました。
優美で神秘的なその光景に、言葉もなくただただ心を預けていると、
そのうちに雲の間から少しずつ、水と緑に溢れた日本列島の一部が
姿を現しました。
生きている、と、その瞬間思いました。
息をして、考えて、調整している・・・何だか、そんなふうに見えたのです。
宇宙から地球を見た宇宙飛行士たちの中にも、「地球が生きている」と
思った人がいるそうですが、それと同じような感覚なのかもしれません。
私は未だにこうして飛行機から窓の外を見るのが好きで、窓際に席を
とってしまいます。
地上にいては絶対に見られない景色。
雲の上の世界は神秘的だけれど、こちらも地上の人間の生活と同じ
真実なのだなぁと思うと、なんだか不思議です。
・・・さて、意識を現在に戻してみると、窓の外はまだまだ雪景色。
あーぁ、春はまだかなぁ・・・
けれども、こんなふうに待つ時間がまたいいのかもしれないな、と
思ったりもします。
想像力とともに、希望の蕾をふくらませて。
春はもうきっと、すぐそこです。
To be ready for blooming!