Late Summer


夏が終わっていく気配を感じて、あわてて小旅行へ行ってきました。

海のある場所に戻って来たので、どうしてもこの夏はサーフィンを
したくて、少しでも暖かい方へと、マサチューセッツの南に位置する
ロードアイランドという州へ。

ロードアイランドはアメリカで一番小さな州で、"The Ocean State"
というニックネームがついているほど、海に近い場所です。
私は前々から、スモーキーなブルートーンで波がデザインされた
ロードアイランドの車のナンバープレートを可愛いなぁと思っていた
こともあって、どんなところなんだろう?と想像していました。

今回はとりあえずの目的がサーフィンだったので、ロードアイランド
出身の友人に少し話を聞いた他は、ほとんど何の知識も持たずに
出かけたのですが、そうでなくても普段から計画性のない私たちは、
旅行に行くときにも、あれこれ調べて準備をすることはまずありません。

なので、「あぁーっ調べておけば良かった!」なんてこともたまに
あるのですが・・・でも、あれこれ知識を入れていかないことで、
その場所に最初に降り立った時に、何の先入観もなくフレッシュな
視点で目の前のものを見ることができ、その土地の空気感を自分の
感性やマインドで感じる、その感覚がとても好きなのです。


そうしてその場所で時間を過ごしていく内に、自然と興味や疑問が
湧いてくるので、夜ホテルに戻った後や、家に帰ってから色々と
調べたりするのですが、そうした経緯を辿ったものはとても印象深く
自分の中に残って、時間を経て意外な物事と繋がったりすることも
あったりするので面白いなぁと思います。

それに、旅先で出会った人から聞いた話や興味を引かれたことから
次の行動を決めたり・・・そういう偶然性というか、必然性のような
ことを楽しんでいくと、ありふれた観光地でも、なんだかとても
オリジナルなものになるような気がします。

路地裏が好き。この夜はブルームーンでした。

今回もそんなふうに無計画な旅だったのですが、着いてすぐに地元の
サーフショップに駆け込んでサーフィンをした後は、ほとんどを
ニューポートという古い港町を観光して過ごしました。

同じニューイングランド地方の港町でも、マサチューセッツのノース
ショアの辺りの比べるとどことなく風格のある雰囲気が漂っていたので
何かなぁと思ったら、この街は、昔から東海岸のお金持ちたちが
こぞって別荘を建てたような場所で、今でもアメリカ人たちの保養地、
避暑地となっている場所なのだそう。
海軍大学などもあるため、セーラーのユニフォームを着たグループと
街角ですれ違うことも多く、なんとあの日本を開国させた黒船来航の
ペリー代将の出身地でもあるそうです。


アメリカ開拓時代に莫大な富を得た人々によって建てられたいくつもの
大豪邸が、今では観光用に公開されていて、今回はその内のひとつ、
海辺に建つお屋敷に訪れてみたのですが、内部のインテリアに至るまで
まるでヨーロッパの貴族のお城のような豪華さでした。

私は歴史が好きなのですが、どうしてもアメリカの歴史に関しては
先住民の侵略や奴隷制などのイメージが先攻してしまい、
目にするのを避けて来たところがありました。
(世界的に長ーい歴史を見てみると、どの地域でもそういった
ことは起こっているわけなのですが、近代なのでどうしても身近に、
リアリティを持って感じてしまうのかもしれません。。)

今回このような豪邸を見ても、やはりあまり気分が良いものでは
なかったのですが、私はなんだかそこで、権力が「血から金」へと
移行した時・・・資本主義の始まりの象徴を見たような気がしました。

血統によって生まれたときから全てが決まってしまっているような
ヨーロッパから抜け出して、自分の力で好きなように人生を開拓しよう
と、この大陸に来た人々。
抑圧から解放され、自由を求め、そしてある者は成功し、莫大な富を
築き・・・そしてその象徴として、このような昔のヨーロッパ貴族
そっくりの豪邸を建てたのです。

それではただ権力の重心が変わっただけで、結局は同じことを繰り
返しているだけなのではないのかな・・・そう思うと、なんだか
とても複雑な気持ちになりました。

昔この大陸に住んでいた北米先住民たちは、そういう不均等を引き
起こしてしまう種が、人間の心の中にはあるのだということを
潜在的に分かっていたために、意識的に国家や権力を発生させない
ような在り方をしていたのだそうです。

去年、アリゾナで見て来た「ネイティブ・アメリカンの先祖」と
言われる人々の遺跡について少し書きましたが、彼らが素晴らしい
建造物を建て、近隣のグループとのモノの流通を始めたりと、
文明的に発展しかけたにも関わらず、ある時を境にそれらを放棄した
のもきっと、その危険性を察知しての行動ではなかったのかなぁと、
このどこか空虚に思える豪邸を廻りながら、色んなことをグルグルと
頭の中で巡らせていた私でした。

 From the window of "The Breakers"


その後、ニューポートから30分ほど車を走らせて、ポーツマスという
静かな場所にある、こちらも昔建てられたという個人の小さな別荘を
訪ねました。
先ほどの豪奢な別荘とは違って、まるで絵本に出てくるようなアメリカ
らしい可愛いお家です。

"Green Animals Topiary Garden"

お庭も色とりどりの花が咲き、程よく手入れもされていて可愛かったの
ですが、何といってもおもしろいのは、植木が動物の形にカットされて
いるのです。まるで、映画「シザーハンズ」のよう。
午後の柔らかな光の中、こんなファンタジックな庭にいると、なんだか
夢の中にいるような気分になってしまいます。


敷地内の芝生の庭を抜けると、その先には線路が走っていて、
その向こう側には海。

こちらの海辺はニューポートと違って周りには何にもなくて、
ただしずかーな、水面に太陽の光がキラキラと反射する、
何の飾り気もない海岸です。

地元の人がのんびり釣りをしているのをこちらものんきに眺めたり、
「すぐそこで売ってたんだよ」というトウモロコシを焼いている
ヒスパニックの家族とおしゃべりしたり。
観光や、ショッピングもディナーもいいけれど、こんな何気ない
旅先での風景や空気感、地元の人々とのささやかな触れ合いが、
旅のいちばん好きなところかもしれないなぁと思います。

晩夏の海。少しずつ傾いていく陽射し。
ニューイングランドの短い夏が、もうすぐ終わっていきます。 


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